運送会社などの物流事業の経営の難しさ、労働時間の管理の難しさ

 

弁護士の齋木です。

本日は、経営が難しい会社の一例として

物流系会社の話を書こうと思います。

 

 

現在、新型コロナの自粛中においても、

社会のインフラとして

毎日の私たちの生活を支えてくれている

運送会社などの物流系の会社の経営は、

非常に難しいものがあります。

 

 

物流系の会社の難しさと聞くと

荷物事故、交通事故

を思い浮かべる方がいらっしゃると思いますが、

それだけではありません。

 

 

荷物事故、交通事故くらいは

ゼロにはできないものとして、

ほとんどの運送会社の経営者は、

織り込み済みだと思います。

 

 

今回のテーマは、

労働時間の管理の難しさです。

 

 

トラックの運転は、

交通事情による渋滞の発生、

積み込み先や卸先の状況による手待ち時間の発生など、

労働時間が長時間化する材料が

至るところにちりばめられており、

労働時間の管理などのコンプライアンスの徹底が

物理的に難しいです。

 

路線便ならともかく、

一般区域の運送会社さんだと、

毎日配送ルートや荷物量が一緒

というわけではないので、

どのドライバーに、

何を積ませて、どこを回らせるか、という

「配車」と呼ばれる仕事が必要になります。

 

この「配車」ですが、

荷主さんが複数にわたる会社では

相積みをする必要があり、

非常に緻密な計画が必要になります。

 

 

しかも、交通事情による遅延、

荷主による時間指定、

卸先の倉庫で何時間くらいの

積み下ろし時間が必要なのか、

ドライバーの運転時間の管理、など

様々な不確定要素を織り込む必要があります。

 

 

 

私たちは、

宅急便などで時間指定ができるので、

時間指定は当然のこと、

と考えてしまいます。

 

もっとも宅急便などは、

日本中に物流拠点があり、

荷物を積みかえながら全国配送していますので、

時間指定も、数時間の幅があれば可能です。

 

 

ただ、そうでない場合、

交通事情や立ち寄り先によっては

予定が狂ってしまうことも多いのが、

一般区域の運送会社の実情でしょう。

 

 

 

労働時間の管理の難しさ

という切り口にフォーカスすると、

次のような法律問題があります。

 

 

 

卸先の倉庫に到着したが、

先に到着していたトラックが列を作って、

荷物の積み下ろし待ちが必要になり、

例えば1時間と待たされたとしましょう

 

トラックはエンジンを付けたまま、

1時間ずっと止まっていました。

この場合の1時間は、

労働時間か、休憩時間か、

どっちなのでしょうか

 

 

似て非なる事例もあります。

 

 

朝8時半から工場が開く場合、

1番乗りしたいので、

ドライバーは朝7時半に工場の前に行って、

1番をとって、工場が開くまでの1時間

ドライバーは工場の前で

待っていたとしましょう

 

この1時間も、

トラックはエンジンを付けたまま、

1時間ずっと止まっていました。

 

 

 

この1時間は、

労働時間か、休憩時間か、

どっちなのでしょうか

 

 

 

実はこの問題、

個々の様々な事情を考慮して、

裁判例でも多様な判断がされていて、

ケースバイケースとしか、言いようがありません

 

 

これでは、労働時間の管理は、

困難を極めることは当然のことです。

 

会社と労働者がもめてしまった場合、

労働者としては、全ての時間が

「労働時間」だと主張するでしょう。

 

 

たとえ、1時間の待ち時間、

ずっとスマホでゲームをしていたとしても、

仮眠をとっていたとしても、

会社はそれを立証することが困難ですから・・・。

 

 

会社としては、どうすればよいのか。

 

 

できる限り、労働時間を多く認定すればよい

 

とか

 

ドライバーの自己申告で休憩時間と

言ってきたもの以外は、

全て労働時間としてカウントすればよい

 

 

そういう発想になれる会社は、

 

残業代が膨らむことを受けれられるわけですから、

 

まだ体力があります

(あるいは、もともと賃金規定などで

事前の対策を取っていることでしょう)。

 

 

事前に、労働時間管理に投資をしていた企業で、

ICTの力を使って、

不活動時間を立証できるのであれば、

それは素晴らしいことです。

 

 

現実は、

そこまでの体力がない

又は

労働時間管理に投資をしていない

 

というところが多いと思います。

 

 

労働時間の管理の難しさのほかに

 

ドライバーという従業員の管理は、

他の業種、他の業界と全く同じで、

やはり一筋縄ではいきません

 

 

トラックドライバーというのは、

全国どこでも、

会社に指示されたとおりに運転をするかと言えば、

現実は、そうでない事例の相談をよく受けます。

(もちろん、会社と個々のドライバーとの

相性などもあるとは思います)

 

 

ドライバーによっては、

 

様々な事情で、

「ここには行きたくない」と言い出したり、

 

ドライバーと卸先の担当者の折り合いが悪くて

(例えば、以前、リフト事故を起こしたとか)

 

卸先から

「〇〇ドライバーは、もう来させないでくれ」

と言われたりすることもあるようです。

 

行きたくない人がいれば他の人に行かせればよい、

と考えるられますが、

中小の運送会社というのは、今、

余剰人員を潤沢に抱えているところは少ないです。

 

余剰人員がいないことは、

運送会社だけでなく、

中小企業ではどこでもあることです。

 

行きたくないと言った

ドライバーの意向をそのまま受け入れると、

誰だって仕事の好き嫌いはありますから、

 

全員が選り好みすることになってしまい、

とんでもない事態を招きかねません。

 

 

多くの中小の運送会社では、

急に、「ここは行きたくない」と言い出し、

動かないドライバーがいると、

社長や社長の家族が急遽運転をしたり、

退職したドライバーに連絡して、

仮に時間が空いていれば来てもらったり

している話をよく聞きます。

これは、本当はやめた方がいいです。

 

このやり方をしている限り、

会社の労務管理は成功しません。

 

 

まとめると、物流系の会社は

労働時間の管理と従業員の管理が、

本当に難しいということです。

従業員の管理は、どの業界でも難しいです。

 

 

労働時間の管理はもちろん、

どの業界でも難しいですが、

私の弁護士としての経験上は、

物流系が一番難しい業界だと思っています。

 

業界最大手のヤマト運輸も、

数億円単位の未払い残業代があって

支払ったという報道が数年前にありました。

 

上場企業ですら、

労働時間の管理に四苦八苦するほどなのです。

 

※諸外国では、

トラックドライバーに対する

労働時間の管理の難しさがあることを踏まえて、

全て請負制にしている国もあるほどです。

 

 

取扱い荷物(手積み・パレット・フレコン等)や

荷下ろし先の待ち時間、

荷物の積み下ろし時間

(自主荷役なのかどうか)など、

実は、それぞれの運送会社によって

事情が異なるので、

一律に、

こうすれば解決できる、

運送会社の労働時間の管理は、これで解決!

というようなことができない

と私は考えています。

 

唯一の解決策は、

会社ごとの荷物の特徴、

荷下ろし先などの取引先企業での

手待ち時間がどれくらいあるか、

などを一つ一つ検討して、

会社独自のルールを作り、

労働時間の管理を丁寧に考えていくしかない

と思っています。

 

 

 

なぜ、こんなことをいきなり書いたかというと、

私の父は運送会社を経営していました。

 

 

私が司法試験に受からなかったら、

将来的には、父の運送会社を継ぐという選択肢が、

子供のころから頭の片隅にありました。

 

私は、法科大学院に入学する前の大学学部時代、

経営論やマーケティングを学んでいました。

 

学部で経営学などを学んだ理由としては、

両親が会社経営をしていたことが、

大きな理由となっていることは間違いありません。

 

父と母が運送会社の経営について、

あれこれと悩んで、議論している姿を

子供の頃から見てきました。

 

特に、高校生くらいになって、

もうすぐ自分も社会に出る年齢になるんだ、

と言ったあたりからは、

意識的に話を聞いていました

(もっとも、大学受験期などは、

父と母の会話が時にヒートアップして、

声が大きくなると、勉強の邪魔でしかなく、

大変うっとしく感じる時期もありましたが)。

 

 

結果的に、私は司法試験に運よく合格し、

父の運送会社は後を継ぐ者がいなかったこと、

あとは、父の本音かどうかは知りませんが、

中小の運送業界の経営環境が厳しくなり

お薦めできない、と言っていたこと、

などを踏まえて清算しました

(※破産ではなく、単純に会社をたたむ、

ということで、父と母にはそれなりの資産が残りました)。

 

 

私自身、いろいろ思うところがあり、

最後の1年くらい、

これも人生経験になるのではないか思い、

運行管理者の資格をとり、

弁護士業務を一部制限して

配車業務等をやった期間があり、

この仕事の難しさを肌身で感じました。

 

 

なので、

運送業界については、

私が持っている弁護士資格と運行管理者資格を利用して、

それぞれの運送会社さんの実情に応じた、

法務アドバイスや

経営上のアドバイスが可能だと思っており、

実際に、顧問先においては、

困難を極める中小の運送会社の経営相談、

労務問題の相談、荷主に対する対応方法

などのアドバイスをしています。

もちろん、交通事故などの対応もしています。

 

 

これから、時間があれば、

運送業界の労務問題や経営上の問題について、

少し記事を書こうかなと思います。

 

 

 

 

 

 

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