バイク事故に遭われた方へー事故の傾向や推移、賠償金について弁護士が解説
1.バイク事故の特徴について
バイク事故の最大の特徴は、被害者の方の怪我の程度が重いことです。
バイク事故の場合、被害者となるバイクの運転者には、加害者の車からの衝撃がダイレクトに人体に加わります。
その結果、車対車の事故と比べて、被害が深刻になってしまう可能性が大きいのです。
特に、頭部や頸部という人体の重要な部分に対する怪我を負うことも多く、その場合、重度の後遺障害が残ってしまうケースも多いです。
2.バイクと自動車の交通事故~致死率の高さ~
バイク事故においては、「怪我」の程度が重いということに限らず、致死率が高いことも、客観的なデータに数字として現れています。
三重県警察本部が整理した「三重の交通事故-平成28年12月末-(http://www.police.pref.mie.jp/info/toukei/03_toukei/16koutuujiko.pdf)が詳しいのですが、
平成27年度、平成28年度の三重県内の交通事故の統計データから、致死率をはじき出すと、次の表のようになります。
自動車・自転二輪・原付・自転車・歩行者別の致死率 |
||||||||
区分 |
負傷者数 |
死者数 | 死負傷者 |
致死率(%) |
||||
28年度 |
27年度 | 28年度 | 27年度 | 28年度 | 27年度 | 28年度 |
27年度 |
|
自動車 | 6468 | 7558 | 34 | 32 | 6502 | 7590 | 0.52 | 0.42 |
自動二輪 | 256 | 270 | 12 | 6 | 268 | 276 | 4.48 | 2.17 |
原付車 | 338 | 385 | 5 | 9 | 343 | 394 | 1.46 | 2.28 |
自転車 | 621 | 737 | 12 | 12 | 633 | 749 | 1.90 | 1.60 |
歩行者 | 467 | 549 | 37 | 28 | 504 | 577 | 7.34 | 4.85 |
平成27年度、平成28年度の双方において、自動車と自動二輪・原付車のいわゆる「バイク」の交通事故においては、致死率がかなり高いことが一目瞭然です。
見方を変えれば、交通事故において、車に乗っているだけで、バイクに比べれば、致死率は下がるということです。
同じバイクでも、自動二輪と原付では、致死率が大きくことなりますが、原付は自動二輪に比べて、スピードが出ない、出にくい、法定速度が時速30キロであるなどスピードが自動二輪に比べ遅いことが原因ではないかと考えられます。
なお、バイクに限らず、自転車、歩行者も、ともに高い致死率で、結局、自動車運転者と違って、人体にダイレクトに衝撃が加わることが、この差の原因だと考えられます。
3.バイク事故と後遺障害
バイクの事故において、どのような後遺障害が残るのか。残念ながら、交通事故の統計などを見ても、バイク事故と後遺障害の残存の関係を示すデータは見当たりませんでした。
しかしながら、致死率がこれだけ高いのですから、死亡には至らなくても、後遺障害が残る可能性も、自動車運転者との対比において、かなり高くなるであろうことは、容易に推測できるのではないでしょうか。
実際に当事務所で経験した事例でも、バイクでの事故の場合、自動車運転者の方と対比して、脊髄損傷・高次脳機能障害・遷延性意識障害といった神経・脳に関わる怪我の割合は多いように感じます。
また、手足の骨折、可動域制限と呼ばれる手や足の関節の動く範囲が大きく制限される後遺障害なども非常に多いように感じます。
後遺障害認定のためにもできるだけ早く、適切な治療を
バイク事故に限った話ではないですが、重度の傷害を負ったケースであればあるほど、適切に治療を行うことは当然、その後のリハビリ期間も含めて、万に一つ、重大な後遺障害が残った場合のことを想定しておかないと、場合によっては、後遺障害の認定などにおいて問題が発生し、適切な損害賠償が受けられなくなってしまう可能性が高い類型です。
まずは、事故直後、またはできるだけ早い時期に怪我の状況を正しく把握し、専門家に一度は相談しましょう。
4.バイク事故の過失割合
過失割合とは?
過失割合というのは、どちらかが一方的に悪い(例えば、加害者が赤信号無視をした)ことが明らかな場合を除き、何らかの方法で、事故の発生状況を明らかにすることがスタート地点です。
ここ数年、車対車の事故であれば、どちらかの車にドライブレコーダーが付いている割合が飛躍的に増加しているとの実感がありますが、バイクに、ドライブレコーダーが搭載されている例は極めて稀だと感じています(ヘルメットにつけるドライブレコーダー等が販売されているようですが、車に比べると搭載率は低いというのが当事務所の実感です)。
実際、当事務所の感覚では、車対車の事故に比べて、バイクが絡む事故でドライブレコーダーの映像があるケースは、ほとんど経験がありません。
ほとんどのバイクは、ドライブレコーダーを搭載していない
過失割合がどうやって決定されるかというと、どこで、どんな運転方法によって、事故が発生したのか、どのような衝突が起きたのか、という客観的事実を確認することが前提になるのですが、バイクが絡む事故では、相手方となった車にドライブレコーダーが付いていなければ、事故の内容を客観的に証明する手段がないケースが多く、過失割合で紛争化する確率が非常に高いと言えます。
そして、過失割合は、基本的に法的判断が必要とされる問題です。
ドライブレコーダーがないような事例では、裁判などでは大きな争点となることが多い難しい問題です。
バイク事故は、被害者の怪我の程度が重く、損害額も大きくなる場合が多く、過失割合が1割違うだけで100万円単位で賠償額に変化がでることも珍しくなく、本当に重要かつ難しい問題です。
しかしながら、実際には、「保険代理店の方に8対2と言われた」であるとか「保険会社の担当者からは、5分5分です」と言われたとの話を前提に、納得感の低いまま、話が進んでいるケースもあり、物損(バイクの修理費など)については、治療中であっても、先に保険代理店や保険会社の方の言いなりになって、示談をしているケースもあります。
保険会社は交通事故被害者の味方なのか?
では、保険代理店や保険会社の担当者の方の説明する過失割合は、絶対に正しいのでしょうか。
答えは、正しいこともあれば、間違っていることもある、玉石混合と言わざるを得ないレベルです。
法律実務では、数の多い事故類型は、「別冊判例タイムズ38 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂5版(略称:判例タイムズor判タ)」という本を用いて検討することがとても有用とされており、保険会社はもちろん、保険代理店の方もこの本を買って、事故当事者の方に過失割合をお示しすることがあるようです。
しかしながら、上記判例タイムズは、東京地裁の交通事故を専門的に扱う裁判官が執筆した訴訟代理人を務める弁護士向けの本である(少なくとも当事務所の弁護士はこのように理解しています)わけであって、交通事故の法律実務に精通しない方が利用されて、多くの誤解と誤った過失割合の判断をされていることが多いです。
バイク、自転車、歩行者と車の交通事故の場合、車対車とは違って、過失割合の認定は一般的に難しく、多くの修正要素と呼ばれる考慮事項の法的判断が必要になってきます。
当事務所としては、バイク(自転車や歩行者も同じです)事故の場合は、仮に修理費の物損の示談であっても、治療中なのであれば、先に物損分の示談をすることなく、専門家に相談すべきケースだと考えてます。
5.保険関係を正しく把握できていますか?
バイク事故の事例では「バイクの保険に入っていなかった」というご相談者様からの話をよく耳にします。
確かに,バイク自身の保険には入っていないこともありますが,バイクとは別にご本人やご家族が自動車保険に加入されている場合には、その自動車保険から弁護士費用や、場合によっては治療費がでることも十分に想定されます。
一度、ご自身、ご家族の自動車保険の内容を確認されることをお奨めします。